株式会社ナンバーの渋谷さんとスパルタンレースについて話しました。
Web業界の人とスポーツについて語るシリーズ。今回は株式会社ナンバーの渋谷さんにスパルタンレースについてお聞きしました。スパルタンレースについて知らない方も多いと思いますが、なかなか面白そうなレースでした。そして、渋谷さんがレースを続けているのはとっても意外なものでした。
スパルタンレースとは?
今日はナンバーの渋谷さんに、スパルタンレースについてお聞きしようと思います。スパルタンレースって、渋谷さんがSNSに上げ始めるまで全く知らなくって。正直、めちゃくちゃ厳しいというか、ヒイヒイ言うような感じの競技かなって思っているので実際どうなのかなっていうのをお聞きしたいです。
スパルタンレースって、簡単に言ってしまえば障害物競走なんです。障害物レースです。5キロ、10キロ、21キロとかのランニングコースを走るんですけど、その間に20個とか30個の障害物があって、それをクリアしていきながらタイムを競うレースです。
なるほど。5キロと言っても、普通の人からすると、結構長いですよね。慣れてないときつい感じです。
ちょっとランニングとかジョギングをしてる方だったら、5キロは30分くらいで走れるかなと思うんですけど、レースの場合は途中に障害物があるので、何だかんだ1時間以上かかりますね。僕の場合だとだいたい1時間半くらいかな。
具体的にどんな障害物があるんですか?
障害物の順番は毎回違うんですがよくあるパターンとして、例えば、最初にあるのは1メートルくらいの塀です。その次には1.5メートルくらいの壁を乗り越えるものがあったり、壁系の障害物は結構多いです。重いものを持つ系の障害物もあって、大きな鉄球を持って少し進んで戻ってくるっていうやつがあるんですよ。男の人だと50キロくらいの鉄球ですね。
50キロ!?それ、かなり重くないですか。持てるものなんですか?
ほんとに重くて…。持ち方にコツがあるんですよね。完全に膝をついて、膝の上を滑り台の逆みたいにして鉄球を転がして、お腹の方に転がして、そこから上に引き上げるみたいな感じです。この持ち方をしないと、普通に持ち上げるのはまず無理ですね。
いや、それはきついです。腰とかやらないんですか?怖いですよね。
腰をやっちゃう人は結構います。だからフォームが大事です。あとは、砂袋とか、砂の入った缶とか重いものを持って動くっていうのもありますし、ロープクライムっていって、ロープを登るのもありますし、やり投げもあるんですよね。
えっ、やり投げ!?それ、本格的なやつですか?
本当に槍を投げるんです。雲梯(うんてい)もありますね。モンキーバーを渡るやつ。そのモンキーバーの吊り輪バージョンがあったりして。ぶら下がるとか、持ち上げるとか、乗り越えるとか、いろんな種類の障害物があって、大体20種類から30種類くらいあります。あ、有刺鉄線の下をほふく前進でくぐるっていうのもありますね。
ちょっと待って、有刺鉄線って…本物です?
本物ですよ。ちゃんとした有刺鉄線なんで、ちょっと引っかかるとTシャツが破れたり、皮膚が切れたりします。だからほふく前進のときは長袖とか、あとは膝を守るために長ズボンがいいですね。地面に石とかがたくさんあって膝がすごく痛いですし、雨でもレースはありますから濡れているとぐちゃぐちゃだし。
それ、相当きついですね。雨でやるって…。
雨のコンディションだとレベルがまた1段階、2段階上がります。もう全てが滑るんですよ。雲梯とかも、ツルっとなりますからね。必須アイテムとして、滑り止めのついたグローブを使うんです。ロープを引っ張る系の障害物があるんで、こういうグローブがないと手が火傷しちゃうんです。救護室行きになる人もよくいます。
なるほどね。濡れた鉄球なんか素手だと絶対持ち上がらないですもんね。
危険すぎます…。
スパルタンレースはいろんな力だったり、ちょっとしたコツが必要な障害物を乗り越えていって、失敗したりクリアできないと、近くでバーピー30回の罰ゲームをやるんです。
バーピー30回!?それだけで、めっちゃきつくないですか(笑)。
きついです、正直(笑)。それもこの競技の面白いところですね。バーピーがちゃんとできているかどうかも見られてるんですよ。特に「コンペティティブ」だと審判がいて、ジャンプした際に手がちゃんと肩より上に上がってないとか、胸がついてないとか、そういうのを見て注意してくるんです(※)。
※コンペティティブのペナルティはたいてい「ペナルティループ」という走るものになります。
スパルタンレースは「オープン」と「コンペティティブ」がある
スパルタンレースって審判がいるんですか?自己申告じゃなくて?
そうなんです。スパルタンレースには2つのカテゴリーがあって、「オープン」と「コンペティティブ」なんです。「コンペティティブ」はちゃんと審判がいて見てくれてるんです。「オープン」の方は自己申告みたいな感じで、仲良くワイワイしながら走るんで、バーピーも適当にやっちゃってる人もいますね(笑)。
ガチの競技じゃなくて、みんなで運動がてらっていうのもアリなんですね。
オープンだといろんな人が参加してます。年齢や性別に関係なく、キッズ部門もあるので、僕の子供も幼稚園の頃に出ましたしね。この前走ったときには、そこそこ年齢のおばあちゃんに抜かされてびっくりしました。たぶん60歳オーバーだと思うんですけど、めちゃくちゃ元気で。
すごいな~。特に技術が必要というわけじゃないから、体さえちゃんとしてれば参加できるって感じなんですね。
おっしゃる通りです。若干コツは必要な部分もありますけど、特別な技術は必要ないんです。だから、ネタとして一度出てみるってのもアリだと思いますよ。
渋谷さんはオープンですか?それともコンペティティブ?
去年まではずっとオープンで出てたんですけど、今年の富士山の裾野のレースで初めてコンペティティブで出ました。結果は442人中425位でボロボロでしたね(笑)。ガチ勢が多すぎて、僕はまだまだだなーと感じましたね。
ガチ勢はなかなかすごそうなイメージがあります。
オープンだと和気あいあいとしてるんですけど、コンペティティブは本当にガチ勢が多くて、気を抜くとどんどん抜かされていく感じです。
イメージとしては、もっとむちゃくちゃハードで、すごいトレーニングしないと出られないかと思ってたんですけど、意外と普通の人でもいけそうな気がしてきました。
そうなんですよ。トライアスロンに比べると、かなりハードルは低いと思います。トライアスロンって泳げないと話にならないし、泳げないと溺れちゃったりしますけど、スパルタンレースは5キロ走れて、ちょっと筋トレしてるくらいの人なら全然参加できます。
チームでやるんですか?それとも個人?
チームと個人、両方あります。オープンはチームで出るのもアリだし、コンペティティブは基本的に個人で出る感じですね。
チームでやるときは手伝ってもらえたりするんですか?
チームのときは助け合いができるんですよ。たとえば高い壁を乗り越えるときに、下から支えてあげるとか。ただ、障害物によってはヘルプOKのものとNGのものがあります。例えば、雲梯の下で支えてあげるのはダメなんですけど、壁を乗り越えるときに助けてもらうのはOKだったりとか。チームだとそういう助け合いが許されてます。
自宅に懸垂器具を設置
なるほど、面白いですね。そういえば、普段のトレーニングってどんなことしてるんですか?
懸垂は欠かさずやってますね。ぶら下がり系のトレーニングもやってます。あとは腹筋、スクワット、ダンベル使ってのトレーニングなどを家でやってます。公園でもやりますけど、順番待ちが大変なんで、家に懸垂器具を導入しちゃいました。
自宅に懸垂器具って、やる気ありますね(笑)。
そうなんですよ(笑)。最初は公園でやってたんですけど、おじいちゃんが長らくぶら下がったりしてて、なかなか空かないんです。だから「もう家でやろう!」って。
これ、家庭内の予算は通ったんですか(笑)?
それが通る前に買っちゃったんですよ(笑)。ちょろっと相談したら、「どうせ洗濯物干しになるでしょ」って言われたんですけど、「いや、もう買っちゃったから!」って無理やり導入した感じです。今では家族みんなで使ってますから。
まあ、続けてるなら結果オーライですし、懸垂って全身を使うから、いいトレーニングですよね。
懸垂はきついけどやっぱり効果的ですね。3日に1回くらいはやってます。握力も鍛えないといけないんで大事です。他には「ボルダリング」や「クロスフィット」なんかも取り入れ始めています。
前泊して装備もそこそこ整える
ところで、スパルタンレースってどれくらいの頻度で開催されてるんですか?
スパルタンレース自体は世界中で開催されていて、日本国内だと3~4ヶ月に1回くらいのペースですね。年間4~5回くらい開催されてます。国内だと限られた場所での開催なので、関東なら千葉の公園で開催されたり、新潟のガーラ湯沢だったり。12月には沖縄で2回目の開催が予定されてるんですよ。
遠い場所で開催されることもあるんですね。前泊して参加したりするんですか?
基本的には前泊してます。最初は当日行って当日帰ってたんですけど、やっぱり疲れちゃって、いいパフォーマンスが出せないんですよ。前泊は朝がゆっくり準備できるし、会場までの移動時間も考えなくていいので、コンディションも整えやすくレース自体を楽しめる感じがあります。もちろん、お金はかかるんですけど、体のことを考えると前泊ですね。
コンディションのためには前泊と。あとは参加に必要な装備ってありますか?
最低限の装備っていうと、Tシャツと短パン、あとは先ほどもお話した滑り止めグローブくらいですかね。これだけあれば一応参加はできます。ただ、レースを続けてると、ちょっとずつ「あ、これもあったほうがいいな」って思うものが出てくるんですよ。
例えば、どんなものですか?
僕がやっていて思ったのは、ランニングベストがあると便利だなってことですね。ベストに水とか栄養補給のゼリーを入れておいて、好きなときに飲んだり食べたりしながら走れるんですよ。10キロとか20キロのレースになると、これがあるとすごく助かります。
ベストが必要ということなんですが給水ポイントはあるんですか?
5キロの場合は給水ポイントが2、3ヶ所ありますね。でも、自分のタイミングで飲みたいときに飲めるっていうのは大きいです。やっぱり走ってる途中で喉がカラッカラになると辛いので。
5キロでも意外と装備が必要なんですね。お金がそこそこかかりそうな。
ランニングベストとかグローブとかは必要に応じて揃えていけばいいですし、初めての参加でも全然いけますよ。まあ、僕の場合はちょっと記録を残したくてGoProも使ってますけど(笑)。冒頭のポストにあるようにチェストマウントに付けて、胸のあたりからの映像をずっと撮ってます。それを帰ってきて編集したり見返したりするのも、また楽しいんですよね。もちろん、携帯で撮影してる人もいますし、やり方はそれぞれです。
意外とハードルは低いんですね。レースの時間としては午前中に始まって、昼過ぎに終わる感じですか?
ガチ勢が朝からスタートして、そのあとオープンの参加者が続いていくんですけど、全部が終わるのがだいたい午後4時くらいですね。朝から閉場するまでは会場でいろんなブースがあったりして、スポンサーのグッズが買えたり、スパルタンレースのオリジナルグッズなんかも売ってます。
グッズ販売もしてるとは。参加者も気に年になりますし、マネタイズという観点からもいいですね。
この前はスパルタンレースとハローキティがコラボしたグッズが売ってたりして、意外と色々あって楽しいんですよ。レース前後の時間を使って、そういうブースを見て回るのもまた楽しみのひとつですね。
レース後は楽しく見て回る余裕はなさそうですが…。
会場の近くに温泉がある会場もあるので、レースが終わったあとに温泉に入って帰るっていうのもアリです。例えば、新潟のガーラ湯沢のレースのときなんかは、みんなで温泉に行って、ゆっくりしてから帰ったりしますね。
ただ、ガーラ湯沢の温泉のときはちょっと事件があって…。雨が降った後のレースだったんで、みんな泥だらけで温泉に行くんですよ。で、ドロドロのまま温泉に入ったら、もう足元とかが大変なことになって、温泉のスタッフの方がめちゃくちゃ怒ってましたね。「もう、スパルタンレースの人たち来ないで!」みたいな。
そのあたりは主催者と地元がうまく調整していきたいところですよね。オーバーツーリズムみたいになっても良くないですし。
温泉とか銭湯とかはちょっと嫌がられちゃいますね。飲み屋とかレストランとかでは「スパルタンレースウェルカム!」みたいな看板を出してくれるお店も多くて。町全体で盛り上げてくれる感じがあって、レースの雰囲気も良いんですよ。町おこしじゃないですけど、参加者が飲食店とかにお金を落とすっていう意味では地域活性化に繋がってると思います。
そういえば、参加費って結構高いんですか?
そこなんですよね。参加費がだいたい1万5000円くらいで、消費税とか保険代が入ると2万円ちょっと。しかも、遠い場所だと移動費とか宿泊費もかかるから、1回参加するだけで3、4万円はかかっちゃいますね。年間4回出ると、結構な額になりますが、レース自体の楽しさや達成感がそれを補ってくれるんですよね。僕にとっては健康維持のためでもありますし。
トレーニングが役立っている実感が得られるのがモチベーション
確かに健康のためなら、それくらいはアリですね。参加してみて一番良かったって思うのはどんなところですか?
一番良かったのは、普段やっている筋トレとかランニングが役立つという実感が得られることです。日々のトレーニングがレースで結果として見えると「ああ、頑張っててよかったな」って思えるんですよね。いろんな地方に行けるのも楽しいし、それがモチベーションになってます。
リアルな結果が見えるのはモチベーションになりますね。
僕の場合はバセドウ病で体調が悪かった時期があったので、家族は健康のためにやっているのを理解してくれています。動けるうちに動いておきたいなって思うし、日常的に体を動かせる状態でいたいですから。旅行がてら家族で参加したこともあるので、そういう面でも家族の理解はありますね。病気を経験してるからこそ、動けることのありがたさをすごく感じます。
なんか本当にやってみたくなってきますね。楽しそうですし、健康にも良さそうです。
ぜひぜひ、一緒に出ましょうよ。「Team YAKITORI」っていうチームを作っていて、いつも一緒に走る仲間を探しているので、ぜひ森野さんもどうですか?
牧野さんに出会って始めたスパルタンレース
うーん、どうしようかな(笑)。でも、やるなら練習もちゃんとやらないとですね。
最後にスパルタンレースを始めたきっかけって何だったんですか?
仕事でお世話になっていた牧野さんという方からの紹介がきっかけだったんです。牧野さんとご飯に行ったときに、「最近、スパルタンレースに出てるんだ」って話してくれて。僕は何それ?みたいな感じで、トライアスロンみたいなやつですか?って聞いたんですよね。「いやいや、そうじゃなくて障害物レースみたいなもんだよ」って言われて。それで、「へぇ、そんなのあるんだ」って初めて知ったんです。
そこから興味を持ち始めたと。
そうですね。最初は、絶対に無理だなって思ってたんですよ。だって聞いてる限りすごくきつそうだし、トレーニングとか大変そうじゃないですか。牧野さんにも「誘われても無理無理無理」って言ってたんです。
それから1、2年くらい経ってからかな、ふとしたきっかけで「一回出てみようかな」って思ったんですよ。そこからが始まりですね。
牧野さんがいなかったら、渋谷さんはスパルタンレースに参加していなかったかもしれないですね。
本当に牧野さんが教えてくれなかったら、僕はスパルタンレースなんて知らなかったし、今の健康的な生活もなかったかもしれません。牧野さんは僕にとっての”スパルタンの師匠”みたいな存在でした。
牧野さんは普段から運動とかされていた方だったんですか?
牧野さんはロードバイクとかもやっていてすごくアクティブな方でした。仕事でもA/Bテストとかマーケティングを一緒にやらせてもらっていて、公私ともにすごく信頼できる方でしたね。スパルタンレースに関しても、「あの人がやってるなら間違いない」って思えたんです。それで参加を決めたんです。
でも…実はその牧野さんが去年、白血病で亡くなってしまったんです…。
えっ…そうだったんですか…。
最初は慢性骨髄性白血病っていう進行が遅いタイプだったんですよ。だから、病気のことを聞いたときも、「ああ、牧野さんなら乗り越えられるだろう」って思ってたんです。でも、状態が急に悪化してしまって…。一気に急性に進行してしまって。僕もその知らせを聞いたときは本当にショックで…。
それは、かなりショックですよね…。
入院する前にも、牧野さんと「元気になったらまた一緒に走ろうね」ってメッセージをやり取りしていたんです。その前には忘年会で一緒に焼き鳥を食べに行こうって話してたんですけど、「ごめん、ちょっと入院するから延期してもらえる?」って。
それから少し経ってから、「あれ?」って思ってたら牧野さんのnoetやFacebookで白血病の話がアップされて。最初は「慢性だから大丈夫だ」って言ってたんですけど、あれよあれよという間に急性に進んでしまって…。本当にあっという間でした。
それは、本当に悲しいですね…。どう受け止めたらいいのか、分からないです。
牧野さんが教えてくれたスパルタンレースは、今では僕の健康を維持するために欠かせないものとなっています。牧野さんがいなかったら今の自分はないです。僕がスパルタンレースを続けているのは、牧野さんがいたからこそなんです。それが僕の健康や生きがいになっているんです。だからこそ、彼のことをみんなに知ってもらいたい。
こうして話を聞いているだけでも、牧野さんの存在の大きさが伝わってきます。牧野さんがいたからこそ、渋谷さんがスパルタンレースに出会えたんだなって。
そうなんです。何回もお話していますが、僕は健康の大切さを伝えたいし、スパルタンレースを通じて牧野さんのことも知ってほしいんです。牧野さんの存在がなければ、僕はここまで続けられなかったし、こうして話すこともなかったと思います。
健康って、当たり前じゃないんですよね。牧野さんのことがあってから、僕も「今動けるうちに動こう」っていう意識が強くなりました。だから、僕もスパルタンレースをやってるし、これからも続けていきたいんです。
今日は貴重なお話をありがとうございました。牧野さんのこと、記事にしっかりと書かせていただきますね。
ありがとうございます。牧野さんの存在が少しでも多くの人に伝われば嬉しいです。そして、これを読んだ人が「自分も健康のためにやってみようかな」って思ってくれたら、それもまた牧野さんへの恩返しになるかなって思います。
牧野さんのnoteはこちら
かなり長い記事ですが皆さんにも読んでいただきたいです。私は牧野さんにお会いしたことはないですが、牧野さんのことを知ってほしいですし、渋谷さんがスパルタンレースを頑張っている理由もわかると思います。
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