LIFT合同会社の岡田さんと地方Jクラブのスポンサードについてお話しました。

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Web業界の人とスポーツについて語るシリーズ。今回はLIFT合同会社の岡田さんにツエーゲン金沢をスポンサードする理由についてお聞きしました。地方クラブの価値ってどこにある?と思った方には読んでほしい内容です。

コロナがきっかけで金沢に移住

今回はLIFTの岡田さんとお話をします。きっかけは岡田さんがなぜか金沢に移住されて、いつの間にかツエーゲン金沢のゴールドスポンサーになっていて、さらにツジオラジオの編集もされていると聞いたからなんです。なぜ急にそこまで来たのかなというのが気になってまして。最初に金沢に移住されたあたりから、教えていただけますか?

金沢に移住した一番のきっかけは、コロナでした。それまでは東京で会社経営などをやっていましたが、個人的にはそれ以前からずっと移住願望がありました。若いときは人混みの方が良かったのですが、30代に差し掛かると、もしかしたら都心は自分に合わないのかもしれないと思い始めたんですよね。もともと休みがあれば遠くに行くとか、貸別荘を借りてみるとかしていて、コロナ禍で会社にほとんど行かなくてもいい業務設計ができたので、月に1回か2回しか会社に行かなくなりました。それで、2021年1月の緊急事態宣言の際に、「時が来た!」と思い移住することにしました。そのときの候補地として、妻が金沢出身だったので金沢を選んだんですよね。

奥さんが金沢出身だったんですね。

年に何回か帰省して街並みは気に入ってましたし、新幹線で東京まで一本で移動の便もいいので、自然と決まりました。家を購入して改装するのに1年ぐらいかかり、2022年に引っ越しました。

※岡田さんの移住に関しての詳細はこちらの記事をお読みください。
東京から金沢に引っ越した話

何度か行っていて土地勘があるのもいいですね。縁もゆかりもないところだと移住しづらいですから。そして新幹線が通ったのが大きいですよね。金沢から東京まで直通で2時間半。

そうですね。地縁はやっぱり大事だなと思いました。僕は埼玉生まれの東京育ちですが、埼玉だと東京とそんなに変わらないので、埼玉に住むぐらいなら、もっと全然違う場所に住みたいという思いもありました。それで、妻の実家に近い場所への移住を希望したんです。

普通は反対なのですが、奥さんの実家だと喜ばれそうですよね。

妻方の親族にもとても歓迎していただきました。お互いの親の介護問題も含めて考えると、次の世代が誰か行かなければならないですし、僕は長男なので本当は埼玉や東京に居るべきなのですが、幸い兄弟が多いのでまあいいかなという感じで。

元々は浦和レッズのサポーター

それで移住されたということなんですね。なるほど。本題に入ると元々サッカーがお好きだったんですか?

そうですね。あまりソーシャルメディアなどで発言していませんでしたが、高校が浦和にあったので、20年以上浦和レッズのサポーターをしていました。J2に落ちたときから本格的に応援するようになって、もう23,4年ぐらいになります。

浦和レッズのサポーターだったんですね?なんか急にすごい人に見えてしまいます(笑)。

ゴール裏にいたこともありますし…周りで乱闘騒ぎがあったのも見たことがあります。

まあ、よくある…と言ってはいけないですが、昔はよくありましたよね。

今の妻と付き合っているときに埼スタに行ったんですけど、メインスタンドとバックスタンドを間違えて、たまたま入ったところがゴール裏の入口だったんです。妻が「ここの雰囲気はなんか…」といったのを覚えています。

西部緑地公園陸上競技場の観戦体験が良かった

なんか…ですよね(笑)。
そういった経緯があって、金沢に移住されたときからツエーゲン金沢に興味を持たれたんですか?

そうです、はい。

やはり移住先というか地元にサッカークラブがあると気になりますよね。

そうですね。浦和はビッグクラブなので、サポーターとしてサッカーを見ていましたが、こちらに移住してからはただのライト層として何度か西部緑地公園(※)で試合を観戦しました。そしたら観戦体験が埼玉スタジアムと西部緑地公園では全く違いました。

※23シーズンまでのツエーゲン金沢のホームスタジアムです。正しくは西部緑地公園陸上競技場。24シーズンからはサッカー専用の金沢スタジアムがホームスタジアムです。

そりゃそうですよね。浦和はどこと比べても違いますよね(笑)。

やっぱりJ2(※)はこういう感じだなと、良くも悪くも思いました。ただ、僕は家族でスタジアムに行くという前提で考えたときに、埼スタよりも西部緑地公園の方が観戦体験が良かったんです。

※移住当時

それはどのあたりが?

陸上競技場だから遠いですし、長椅子だし、埼スタと比較すると環境は決して良くはないんですけど、人口密度やサポーターの雰囲気、運営の手作り感など、いろいろな要素を含めて、僕はこっちの方がしっくりくると感じました。おらが町のクラブという捉え方をしたときに、金沢の方がそう思えちゃったんですよね。

先ほどの東京から移住されたときの話と一緒で、やっぱり地方に行けば行くほどそう感じますよね。しっくりくるというか。

はい、しっくりきましたので、その後も西部緑地公園では普通にバックスタンドでゆるーく観戦していました。

ずっとお客さんとして、のんびりというか飛び跳ねずに観戦されていたんですね。

息子がゴール裏に行きたいと言ったので、ゴール裏にも何回か行きました。ただ、ヤンツーサッカー(※)は基本マンツーマンで、気合でやるスタイルだったので、夏場になると絶対に強度が下がるんですよ。だから夏は負けるんです。ホームも全然勝てなくて連敗してしまう。これが浦和だったら、2連敗あたりから解任だ!ってなるわけです。

※17-23シーズンまでチームを率いた柳下正明監督のサッカーのこと。

まあそうですよね。連敗とかしたらね。

もう解任だと。でも金沢は拍手なんですよ。よく走ったと、拍手で。

これは地方クラブでは普通なんですが、ちょっと意外だったというか驚きかもしれませんね。みんな夏場がきついことがわかっていますから、優しいという。

そうなんですよ。だから選手が挨拶に来てもブーイングはほぼ起きず、コールリーダーもみんなの言いたいことはわかると。でも、ここはちゃんと愛のある叱咤激励をしようと言ってくれるんですよ。こんなチームないですよ、初めてです。信じられないと思って。

うちの子も選手に挨拶に行くって言って下に降りようとするんですけど、僕の浦和の感覚だと、危ない!そっちは行っちゃダメだ!って笑。

最前列だ!危ない!

ダメだ!そんなところに行っちゃダメだ!!ってなるんですけど。最前列が黒じゃなくて赤(※)だったんです。

そして、応援の人たちが息子においでおいで、ちょっと選手に声かけてやってくれみたいなことを言ってくれるんですよ。そんな光景見たことなくって、ああ、これこそがJリーグが求めている地域密着の、みんなが安心して行けるスタジアムなんだと思って。別に過激な応援を否定するわけじゃないですし、基本的に日本はどの試合も安全なんですけど、シンプルにとても印象が良くて、家族で行くんだったらこっちの方がいいなって思ったんです。

※黒じゃなかった。の意味はサッカーファンの皆さんはわかると思います。わからない方は森野までご連絡ください。

なるほど。浦和のあの雰囲気と比較するとそう思われるかもしれませんね。

こんなことがあって、ホームゲームは毎試合見に行くようになりました。

「LIFTは金沢の企業なんです」と思ってもらえるためにスポンサーに

なるほど。そして、スポンサーになられたんですが、クラブから営業があったんでしょうか?

ここも不思議なご縁で、僕の知り合いに元清水エスパルスでコーチをされていた方がいて、その当時エスパルスの右SBでレギュラーだった辻尾真二さんが、現役を引退されたあとのセカンドキャリアとして、ツエーゲンのクラブアンバサダーをされていたんです。その方から辻尾というやつがツエーゲン金沢で法人営業をやっているので紹介させてくれと言われて、それで辻尾さんとお会いしたんです。

奇遇というかなんというか、不思議なご縁ですね。

金沢に来てすぐの2022年に紹介いただきましたが、そのときは僕もまだ東京の会社をやっていたので、本当に個人としてお話を聞くだけでした。2022年の下半期に東京のことをすべて整理して、LIFTだけに集中することになって、売上の目処が立ってきたときに「せっかくなので地元に何か貢献したい」と思ったんですよね。金沢の企業としては新参者だったこともありますし。

その気持ちはわかります。私も徳島に何かしら貢献したいって思っていますので。

取引先は県外ばかりで、たまたま金沢に拠点があるだけで、仕事の大半が東京ですから、心がまだ首都圏にあるんですよね。

でも生活は金沢にあります。このギャップが必ずしも悪いわけではないですが、少しずつ心と体を近づけていきたいと思い始めたときに、「LIFTは金沢の企業なんです」としっかり宣言する必要があると感じました。ただ、金沢にはクライアントがいないのでどうしようかなと考えていました。広告の仕事だと北陸にはマーケットがあまりありませんし。

確かに。北陸ですと市場規模が小さくてなかなか新規顧客が獲得できないですよね。

ここでクライアントを一生懸命探すというのは、ビジネス的にはあまり良い判断ではありませんでした。仕事の多くは首都圏にありますが、金沢の企業なんですということを知ってもらうために、Jリーグの地域密着型クラブにスポンサーシップを検討することにしました。それで、去年会った辻尾さんにもう一度話をしてみようと思い、辻尾さんにコンタクトを取り、2023年シーズンからスポンサーになる流れになったんです。

そこで辻尾さんが出てくるわけなんですね。私も東京の仕事と地方の仕事をしていますが、求められるレベルや予算が規模に大きな差があって、同じ感覚でやるのは難しいですよね。

そうですね。クライアントの多くが県外にあるという状況は今後もしばらく続くと思いますが、会社としては金沢にしっかりと根を下ろしてやりたいと思いました。僕は金沢いながら外貨を稼ぎ、地元にお金を落とすとか、投資するとか、何かサポートするとか、そういった循環を作ることが重要だと考えるようになったんですよね。NPOの支援もしていて、ソーシャルな動きと地域密着型の企業や団体へのサポートや投資をすることで、良い循環を作っていきたいと思っています。

外貨を稼ぐというとおかしな感じですが、金沢以外で稼いで、そのお金を金沢で使っていくということですよね。

そうです。金沢には学校が多くて、金沢大学や金沢工業大学、金沢美術工芸大学などの有名な大学が複数あります。地方都市としては若い人が多いのですが、産業の受け皿が少ないため、外に出て行ってしまいやすいという構造があります。若い人が興味を持ちそうな仕事が残念ながら少ないんです。東京では人材不足ですが、金沢では需給バランスが逆転している分野が複数あります。やりたいことがあるのに他の仕事をしている人も多いんじゃないかと。

確かに地方は仕事の選択肢は少ないですよね。特にIT系は少ない印象です。リモートで働くにしてもスキルがないと難しいですし。

もしそうなのであれば、金沢で首都圏の企業さんと同じレベルの仕事をして、金沢の平均より高いサラリーを支払えるようになれば、良い雇用を作れているということになりますよね。そして、金沢の象徴的なものに投資することで、あの企業を知っている、見たことがあるという状況が作れれば、採用やご紹介などにもつながるのではないかと思って、その象徴としてまずはツエーゲンに投資しようと決めたんですよね。

なるほど。まさにスポンサードする目的ですね。単純に露出を増やして、認知度を上げて仕事を取ればいいな、という発想ではなくて、地元に貢献することが前提で良い循環を作っていくのが理想だと。

まだ始まったばかりで理想とはほど遠い状況ですが、でも本当にそうですね。

金沢の企業として認めてもらって、金沢の人がLIFTって会社があって、こんなことやってるって知ってもらって…いいですね。

そうなるといいなと思っています。若い人にはピンとこないかもしれませんが、就職しようと思ったときに最後の後押しになるのは、やっぱり第三者の目なんです。

親や家族が知っているというやつですよね。

そうなんです。こういうのは本当に大事で、あの会社いい会社だよと一言言ってもらうだけでだいぶ印象が変わると思うんです。「その会社知らない」と「あの会社知っている」では、条件が同じなら後者を選ぶはずです。

まさに。安心感が違います。

その状況は目に見えませんが、そこかしこで必ず起こっているはずです。それをどうやってLIFTで作ろうと考えたときに、地元に還元しよう、何か貢献しようと繰り返し考えました。僕はサッカーが好きだしツエーゲンも好きですが、それを目に見える形に変えないと誰にも伝わらないので、わかりやすくスポンサー企業に名を連ねようと思ったんですよね

素晴らしいですね。すべてが自然ですし、まさにスポンサードという感じです。

Googleビジネスプロフィールでやたらと検索されていた

今はスポンサー2年目だと思うのですが、2年間スポンサーをしてみて、何か効果があったとか意外と知られているとかの実感はありますか?

僕本人には伝わってこなくて、何と言うんでしょうか…本人の知らないところで話題にしてくれているイメージなんですよ。

東京から来た岡田っていう人がやっているLIFTって会社があって、ITの仕事をしているらしい。とか。

そんな感じなのかなと。

これは地方特有の現象かもしれませんね。

息子がサッカーをやっているので、そこで父母の繋がりができるじゃないですか。まだ話したことがないのに、みんな僕がツエーゲンのスポンサーをやっているのを知っているんですよ。「ラジオ聞きましたよ!」とか (笑)。

それは徳島でも同じことが起きています(笑)。実感しますね。

やっぱりそうですか。

自分の知らないところで、すごく知られているんですよ。

一番わかりやすいのがGoogleビジネスプロフィールですね。地元のクライアントがいないので、お客さんが来訪されることはほとんどないんですが、なぜか大量にルート検索されているんですよ。

LIFT?知らんぞ?と検索するわけですね(笑)

地方の人たちは、地元の有志の会社については耳馴染みがあって認知度が高いので、逆に認知度がないものに接すると、疑いや好奇心ですごく注目してくれるという傾向もあるんじゃないかと感じています。

「あいつは誰なんだ」から「あいつは知ってる」へ

そういうことがあってびっくりする反面、やってよかったというか認めてもらいやすくなったというとこはありますか?

効果を感じるにはもうちょっと時間が必要なんだと思います。1年目がシルバースポンサー、2年目でゴールドスポンサーになったんですが、ここでやめちゃったらそれで終わりで、スポンサー活動を継続して積み重ねていくことで、認知されてくると思います。

そうですよね。東京と地方では時間の流れ方が違いますし、岡田さんご自身も性急な結果を求めてないですもんね。

実感している部分は、共通の話題ができやすいというか、初めて知り合った方との話がスムーズになりましたね。たまたま某機械メーカーの方をご紹介いただいたのですが、紹介してくれた方がサッカー好きだったのでツエーゲンの話をしていたら、メーカーの方が「ツエーゲン?」ってなってその話で盛り上がったんですよね。そこで「一応スポンサーやってます」と言うと、おお!みたいな感じで話が進むんです。全くの異業種ですけど、サッカーのおかげで共通の話題ができるのは助かります。

地方ではクラブの認知度が100%ですよね。神奈川だとJクラブがありすぎて、全部知らない人がいる可能性がありますが、金沢でツエーゲンって絶対に通じますよね。

不思議なつながりもあって、うちの社員が入社前は過去に何度か誘われて観に行ったことがあるというツエーゲンのライトファン層だったんですが、うちの福利厚生でツエーゲンのホーム戦はすべて会社負担にしているので、ほぼ毎試合行くようになったんですよね。

嬉しいですね~。じわじわと馴染んでいく感じが良いです。

地方クラブならではのことで、ビッグクラブだとまた違うものになるでしょうね。

こういったことは狙って起きるのではなくて、やっているうちに自然と発生するものだと思います。

地域の活動を繰り返していくと、「あいつは誰なんだ」から「あいつは知ってる」に変わる瞬間があって、そこで初めてグループに入れてもらえるのかなと。門前払いがなくなるだけでもいいかなと思っていました。

ということは、今後もこれを続けて、金沢に当たり前にLIFTさんがある。金沢の企業としてのLIFTさんというところがゴールなんですか?

目指すのは良い循環ですね。先ほど話したように、地方には職業の選択肢が少ないとか、サラリーが低いとか、いろいろあると思いますが、要するに金沢にいても首都圏と同じぐらいの業務水準やサラリーがあって、その土地に住みながら胸を張れるキャリアが構築できれば、仕事がないから東京に行くということをしなくても済むかもしれませんから。

地方は物価も安いので、優雅な生活ができますよね。

物価も安いですし。混んでいませんし。

確かに。混むのは祭りとか大きなイベントだけですよね(笑)。

スポーツチームのスポンサーになるときって露出や認知度向上を求めそうな感じなのですが、岡田さんはそうではなくて地域に認めてもらうというか馴染んでいくためでした。お話を聞いているとまさにその通りだと納得です。地方への移住を考えている人、地方に進出しようとしている企業、スポーツチームの方には参考になる内容だったと思います。

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