アナグラムの小坂さんとサッカーと企業の組織論について話しました。
久しぶりのWeb業界の人とスポーツについて語るシリーズ。今回はアナグラム株式会社の小坂彩さんと「サッカーと企業の組織論」についてお話ししました。私自身もサッカーを思い浮かべながら組織のことを考えたりしますので、なかなか面白いお話がお聞きできました。
きっかけは会社ブログのプロフィール
今回はアナグラムの小坂さんにいろいろとお話を聞きたいと思います。なぜ小坂さんにお声がけをしたかというと、会社ブログのプロフィールでサッカーの分析をしてましたと書かれていたからなんです。なんでアナグラムさんにそんな人がいるんだろう?と思って気になりまして。
そもそも、アナグラムさんに入社されたきっかけから教えていただけますか?
元々、スポーツを見るのが好きで、スポーツ業界に関わりたいなっていう思いは中学生ぐらいからずっと持っていました。初志貫徹な感じで新卒でスポーツアパレルの会社を選んだのですが、コロナもあったタイミングだったのでどうしても思い描いていた通りにスポーツ産業を動かしていくのが難しい時期でした。
その時に個人としても、もっと力をつけないと駄目だなと思ったことなどもあり、転職してアナグラムに入社しました。前職でもデジタルマーケを担当していたので、アナグラムのことは知っていまして、普段からブログやホームページとかを見ていました。組織体制や仕組みなど面白いことをやっている会社だな、と思っていたので、そういったところに惹かれて入社したという経緯です。
職種は何で応募されたのでしょうか?やはり人事でしょうか?
今のポジションからするとびっくりされるんですけど、アシスタントという職種を募集していたのでそこに応募しました。他にやりたいこともあったので、それと両立できる仕事ないかなって探していたところで、それとも合致しましたし。
ただ、そこから半年も経たないうちに運用型広告のコンサルタントに変わって、今年からは人事に変わって、コロコロと役割が変わってきてるっていう感じですね。
そうなんですね。最初からずっと人事なのかと思ってました。
広告運用自体の仕事はどうだったんでしょうか。楽しかった?面白かった?つまらなかった?
面白かったです。そもそも、組織のことにどんなに興味があっても、その会社が主としている業務を知らずして語ることはできないかなと思いますし。いまの人事の仕事も楽しいですが、広告運用の仕事をしたからこそ、より楽しめているという側面もある気がします。
そんな人事への異動は自分で希望されたんですか?
もともと組織に興味があったので、人事とかってどうなんですかね?みたいなことも上司とは軽く話したりはしていて、ちょうどタイミングが合ったときに、どう?という感じで声をかけていただいたんです。今は採用の仕事もしていますし、社内改善の一環でイベントをやったり、教育コンテンツも作ったりといろいろやってます。
業務が幅広い感じなのですがお一人で担当されてまいすか?
採用の人事が2人で、労務メインが2名ですね。120名の社員がいますのでこれぐらいだと思います。
人事になってまだ半年ほどとのことですが、楽しいと思ったのはどのあたりですか?やってみての感覚ですか?質問ばかりでスミマセン。
自分の興味が組織論にあるというのが一番大きいかなと思っています。運用型広告のコンサルタントとしてビジネスをどう伸ばしていくかを考えるのも面白かったのですが、人を見るのが個人的には好きなので、どういう思いを持って働いてるのか、どうしたらもっと楽しく働いてくれるんだろう、みたいなところを考えるのが楽しいんですよね。
先ほどの話で社内イベントなどをされているというのが、そこにつながってくるんですね。
はい、影響を与えられる範囲が広いですし、サッカーに絡めて言えばGMっぽいポジションだなと思っています。どういう人を採ってきて、どうやったらチームが良くなるか、ファシリティも考えていくところから入れるのは、面白いですし難しいですし、やりがいがあるなと思います。
東大ア式蹴球部のテクニカルスタッフでした
サッカーでいうところの強化本部長(※)ですね。入社の経緯と今のお仕事をお聞きしたので、本題の大学時代の話に入りたいと思います。小坂さんは東大のア式蹴球部だったんですが、ア式蹴球部って何かを教えていただけますか?
(※)関係ない関連情報
24シーズンの徳島ヴォルティスは強化本部長が途中辞任してえらいことになりました。
ア式蹴球部=サッカー部ですね。蹴球といってもいろいろあるらしく、ラグビーも蹴球と言われているので、区別をつけるためにア式とかラ式とか、それぞれのスポーツごとにの言い方をしていた、ということらしいです。古くからあるサッカー部でそのままその名称が残っていることが多くて、私が認識しているのだと東大以外に早稲田大学や一橋大学もア式蹴球部ですね。
関東の大学に通っていた人は、名前だけは聞いたことがありそうですね。で、そこでデータ分析などをされていたと。
はい、テクニカルスタッフをやっていました。
東大では「テント列」という新入生歓迎イベントみたいなのがありまして、部活やサークルごとにテントがあって勧誘しているんですよね。ア式蹴球部は列の前のほうにテントがあったので、流されるまま話を聞いていた時に私のスマホのロック画面が目に入ったらしいんです。そうしたらサッカー部の人たちが「え?」となって。
ロック画面に何があったんですか?
ダビド・ルイスの写真です。
ダビド・ルイス!(※)大学1年生の女子が壁紙に設定するのはレアですね(笑)。
(※)関係ない関連情報
サッカー実況でおなじみの下田恒幸さんは「ダヴィ・ルイス」と言いますね。
高校生のときの2011-12シーズンにチェルシーがCLで優勝していて、その流れでクラブワールドカップでチェルシーが日本に来たときに試合を見に行きました。そこからダビド・ルイス好きになってずっと待ち受けにしていたんです。
それを見られて「サッカー好きなの?」みたいな話から始まったのがきっかけです。
サッカーは好きだとしてもそこからテクニカルスタッフになるイメージがないのですが。女性なのでマネージャーかなと。
私は野球も好きで、巨人ファン(※)なんですけど、野球だとマネーボールが映画とか本ではやりましたよね。中学・高校のころにセイバーメトリクスの出始めでスポーツ×データ分析って興味あったんですよね。その流れで、好きなサッカーで勝つためのデータ分析をするポジションがあるよって聞いて、興味を持って入ったのが一連流れです。
(※)関係ない関連情報
森野はもちろん中日ファンです。報知新聞は人生で1回しか読んだことがありません。
サッカー好きなんだけど野球も好きで、データ分析も好きってのがすごいですね。これってありがちなお父さんの影響ですか?
そうですね。父も巨人ファンではあるんですけど、当時は父親よりも詳しかったですね。
さすがです(笑)。
サッカーの分析の話で盛り上がる
その結果、先ほど話したテクニカルスタッフのポジションを4年間担うことになって、メインでやっていたのは自チームのデータ分析をしたり、相手チームのスカウティングをしていました。相手チームがこういう感じで来るだろうから、こういうことしようみたいな映像を作ったり資料を作るなどの仕事ですね。
映像を撮って映像分析して、基本的なフォーメーションとか守備組織などを順番に分析していく感じですか?
はい、映像を撮って分析するところが基本にはなるんですけど、私がいた頃はデータスタジアムのシステムを使っていて、映像からデータを1個1個打ち込んでいってました。この選手がこのポジションでパスをしたとか、トラップしたとかですね。ここからヒートマップとかパス成功率のデータとして出てくるシステムを使っていたので、それをもとに数値的な分析などもしてました。
以前はこの手のシステムはすべて手入力でしたよね。バレーボールの分析もこんな感じだと本で読んだことがあります。今ではAIの力で多少は楽になってそうですが。
このデータをもとにコーチや選手にフィードバックしていたということですね。
そうですね。コーチに伝えたり、選手ごとにシートを作ってフィードバックしたりしていました。
データでいろいろ出てはくるんですけど、ここを改善しましょうって言いづらいし、選手にはなかなかわかりづらいし、伝えるのが難しいですよね。
私も当時はこのあたりの認識クリアじゃなかったんですけど、今になって思うと野球ってサッカーに比べると静的ですよね。野球は1対1でピッチャーとバッターが対峙するのがベースになるスポーツである一方、サッカーは11人対11人が複雑に動くスポーツだと思うので、野球よりもデータの使いどころは難しいなというのが、4年間やった印象ですね。
データの使い方は2つあると思っていて、私みたいにサッカーをやってない人が、対等な目線で「こういうデータがあるから」と話せるコミュニケーションツールの面が1つ目。2つ目は気付きを得る役割ですね。盲点になるところがどうしてもあって、こういう印象で語ってたけど実際は違ったというのがたまにありました。データをどう見るかには人の意思が入りますけど、データ自体は嘘つかないので、盲点を洗い出すというのにデータを使っていました。
実際に試合見ていて、この選手はこんな特徴かな?と思ってたら、データ見たら違ったみたいなやつですね。
この選手めっちゃチャンスメイクしてると思ってたけど、意外とクロスの成功率低いねみたいなのですね。他にもキャプテンだからうまいだろうとか、10番だからうまいだろうみたいな先入観があったりするんですが、そういったものにとらわれずにフラットに分析できます。
主に見ていたのはどんなデータですか?
パスマップはよく見ていましたね。
パスマップというと、どの選手からどの選手にパスがどれぐらい出たのか、というデータですよね。
参考URL
スプレッドシート+スライド作成ツールで行う、サッカーの試合におけるパスネットワーク図(パスマップ)の作り方|Sports Analytics Lab
はい。試合中にも書いてたというか、リアルタイムでどんどん書いて、前半と後半でどのぐらい変わってるとか、このあたりが多いと話していたので、ハーフタイムで共有して後半に活かしたりしていました。
試合単位ではそういうところを見ていて、半期ぐらいのスパンだと、パス成功率が前年と比べてこれぐらい上がったなども見ていて、選手たちの成長が可視化されるといった使い方もしていました。
試合中なら、例えば前半のパスマップ作って、ハーフタイムに監督やコーチに見せて判断してもらうという感じですか?
そこは監督とコーチのタイプにもよると思っていて、「なるほどね」「確かに、だからこうしよう」みたいな感じで落とし込んでくれる人もいれば、まったく気にしない人もいるのでそこは人に合わせてといった感じですね。修正に関しても修正する必要があるのか、別にそのままでいいのかは、そのデータ自体が示すことではないですから、データを取って、渡して、会話して決めるようになっていました。
データを扱っていると、データ至上主義というか、データがこうだからこうしましょう!ってことになるケースもあるんですが、そういったことはなかったんですね。パスマップ以外にも、相手のフォーメーションとか基本戦術の分析もされたんですか?
はい、事前に相手チームの映像を撮りに行って分析して、試合前に見せるといったこともやってましたね。
私も勝手にヴォルティスの次の対戦相手の試合を見て傾向をつかむ時があるんですが、おそらくこういう噛み合わせになって、試合展開はこうなるだろうみたいなイメージになるんですかね。
そうですね。試合展開を予想して、試合の最中には予想と比べてどう違うのかなどを考えます。試合前の流れとしては、事前のスカウティングの映像の内容を先に監督に伝えて、そのあとに選手全員に伝えます。こういうゲームプランになることが想定される、この選手のこういうところに注意、といったことを個別にフィードバックしたりとかですね。
試合当日に選手表が配られる段階で、この選手の予想だったけどこっちだったから、ここで入れ替わるかもしれないといったところを考えて、たぶんこういったフォーメーションで来ますと提示します。試合中は予想していたところがあってるのか間違ってるのか、あっていれば事前に話していたプランでいいとなります。間違ってる場合にどこを修正するのかは、ベンチで監督などと話していましたね。
事前のスカウティングと違って、どこがどう変わっているのかって始まるとわかりますよね。4バックだと思ったら3バックだったとか、プレスのかけ方が違うとかです。これって試合時間で何分ぐらいでわかりますか?
10分以内でわかりたいって感じですかね。でも、難しいですね。
10分だとちゃんとセットした守備もなかったりしますし、上から見るのとフィールドで見るのとでも違いますしね。
現地でフィールドから見るのは難しくもあるんですけど、スカウティングって面白くて、映像で見ているのとリアルで見るのは得られる情報量が全然違うんです。映像だと相手との差分などで判断しがちなんですけど、リアルで見るとスピード感とか体の強さとかがわかります。この選手がキーなんだというのは、声の出し方や指示の出し方でも伝わりますし、監督がどういうプレーに怒っていて、どういう点を気にしているのかなどもわかります。
こういった映像だけでは見えない情報が結構多いので、現地でスカウティングできるときはできるだけ現地でした。
声とかスピード感は現場じゃないと絶対にわからないですよね。これを4年間担当されていると、修正箇所はすぐにわかるようになったりしますか?
う~ん、すぐにはわからないですね。
左サイドバックの裏をすごくやられるなと思っていても、それが左サイドバックの責任かって言われると難しいところがあって、どこがボトルネックなのかを瞬時に見つけて修正するのは技術だなって思います。
裏を取られるシーンだけ見てしまうと左サイドバックの責任に見えても、途中で誰かが守備をさぼったり、前線のプレスが緩くてフリーでパスを出されていることってありますもんね。
こうして分析してきたのは今の仕事、特に人事には生きているのでしょうか?
戦術的ピリオダイゼーションと組織の話
そうですね、ちょっと話が変わるんですけど4年間で監督が何回か変わって、4年生の時の監督が戦術的ピリオダイゼーションの考え方を持ってきたんです。
お、戦ピリ!
戦術的ピリオダイゼーションって簡単に言うと、複雑系としてサッカーを捉えるんです。これもなんか難しいですけど、要素に分解して物事を改善しようとするよりも、相互作用を生かしてチームをよりハイパフォーマンスに持っていくための理論なのかなって私は認識しています。
それの基になっている概念が、複雑系とかシステム思考とかそういう理論なのかなと思うんですけど、これを使ってどのようにゲームモデルを組んでトレーニングに落とし込むのかとか、個人のパフォーマンスを最大化するためにはどういうトレーニングのスパンで組んでいくべきなのかみたいなところを論じているのが、戦術的ピリオダイゼーションかなっていう認識です。
さすがです…。
私の場合は「サッカーはサッカーをトレーニングすることによってのみ上達する」という部分が一番頭に残っていて、モウリーニョの「偉大なピアニストは、上達するためにピアノの周りを走ったり、指で腕立て伏せをすることなんてトレーニングはしないだろう。上達するにはピアノを演奏することだ。フットボーラーも同じだ」。という言葉がその通りだと思ってるんですよね。
サッカーを仕事に当てはめるとすごいわかりやすいことがいっぱいあって、ゴールをして勝つという目的が決まっていて、あとはそれを達成するために11人集めて、どこのポジションにどの適性の人がいればいいのかを作っていくわけですから。
※複雑系と言われた時点で難解な考えになってきますので、詳細を知りたい方は参考URLと書籍をお読みください。
参考URL
戦術的ピリオダイゼーション総論。ゲームモデル=「複雑系」への対応
参考書籍
「戦術脳」を鍛える最先端トレーニングの教科書 欧州サッカーの新機軸「戦術的ピリオダイゼーション」実践編
「サッカー」とは何か 戦術的ピリオダイゼーションvsバルセロナ構造主義、欧州最先端をリードする二大トレーニング理論
そうですね、サッカーってルールも決まってるし、勝ち負けっていうのが明確に出るスポーツなので、そういう意味でもビジネスより単純化して捉えやすいと思います。なので、サッカーで理解すると、ビジネスにも活かしやすいみたいなのが本当にあるなと感じてます。
小さい力で大きく動かすということってよく言われるかなと思うんですけど、ポイントってどこなんだろう?みたいな視点はすごく意識するようになりました。どうしたら一番効果的な介入になるんだろうというか…。
そうすると会社の中でゲームモデルのようなものが決まっていて、プレー原則のようなものもあって、それを実行するためのスキルはこれが必要、といったのも決まっているんですか?でないと、戦術的ピリオダイゼーションの考え方が当てはまらないですよね。
基本的には、ミッション・ビジョン・バリューが上段にはありつつ、評価制度がKPIのような形にはなると思うので、それがサッカーでいうゲームモデルや、プレー原則に繋がってくるのかなとは思ってます。
ということは、常にそんなことを考えながら仕事をしてるのか、やっぱりビジネスはビジネス、サッカーはサッカーと分けてる感じですか。ある程度重なるぐらいなのか、ガッツリ重なってる感じですか?
私の中ではガッツリ重なってますね。
サッカーのことを考えているというと、それは仕事ではないだろうと捉えられるかもしれないですけど、サッカーを知ることがビジネスを知ることに繋がるなという感覚はすごくありますね。
具体的にはどのあたりが?
サッカーはすごく複雑だし、選手同士がすごく関わり合うスポーツなので、そこを紐解こうとするには、複雑なものをどう捉えるかという理論や考え方を学ぶ必要があると思ってます。私としてはそれをしているうちに、組織にも同じ考え方が自然と転用できるようになってきたので、サッカーを知ろうとしていたら、組織のことも何となくわかるようになってたみたいな感じですかね。
スポーツって、ルールも決まってるし目的も明快だし、やることも全部決まっているのでわかりやすいですけど、仕事って曖昧な部分が多かったりしますよね。やること決まってなかったりとか、目的が曖昧になっちゃうとかです。
スポーツと比べるとビジネスは甘い…と言ってはいけないですけど、不明確なところがあるのは感じますか?
感じます。ただ、アナグラムはこのあたりがシンプルに明確化されている感覚はあって、そこが私がアナグラムを組織的な観点で面白いと思ったところに繋がってきます。例えば「お客さんのためになることをやれ」という考えが大上段にあるので、誰に言ってもブレなくて社内共通の認識になっています。
複雑なものをシンプルに動かすには、共通認識があってみんながそこに向かってやることが重要だと思うので、ここがクリアされていないといけません。かつ、目標に対してブレずに働くために、一気通貫とか現場の人が責任を持って判断するとか、そういったことが仕組みでしっかり担保されている部分があります。
複雑すぎて手に負えないって感じることはなくて、むしろしっかりした仕組みがあってみんなが全力出して、いいパフォーマンスができるようにすれば、お客様のビジネスとか、ひいては弊社の発展に繋がっていくように設計されているとは感じます。
こういうときはこう、こっちのときはこれみたいな、プレー原則が明確に決まってるんですね。
はい。そうですね。こうだったらこう、こうだったらこうというよりは、それってお客さんのためになるの?って、一言で済むという感じです。細かい判断というよりも、もうちょっと上段で、それはお客さんのビジネスを伸ばすために必要で、アナグラムが介在する価値があるんだろうか?といったところだけ考えればいいのでシンプルかなと思います。
ものすごくシンプルですね。シンプルであるが故に、社会人経験が浅い人や、仕事の経験が浅い人はちょっと難しい感じもします。
確かに難しい部分もあると思いつつ、逆に社会人経験を積みすぎてるが故に難しくなるパターンもありそうかなと思っています。これやっちゃ駄目、あれやっちゃ駄目、こうやるべきみたいに分業で細かく役割が決まっていて、あなたはこういう役割だからこれ以外の仕事はやるなっていう概念が頭にインプットされている人もいますよね。
社会人経験が浅くても、お客様のためになりたいと思っている人だったら、知識とかスキルが足りなくても、固定概念がないので動きやすいっていう側面もあるのかなって。
なるほど、サッカーってほぼ体育会系で、今は違うかもしれませんが理屈なしでやってきた人は多いですよね。そんな人たちに戦術的ピリオダイゼーションの考え方を導入しても混乱が起きちゃうけど、東大だったからすっと行くみたいな感じでしょうか?土壌がある人にはすっと入っていくような。
そうですね。あとはしっかり結果を出すことだと思います。やっぱりそのやり方をやって負けてたら、不信感がどうしても募ってきちゃうので。しっかり結果を出すのが導入にあたっても大事な気がしています。言っているだけで、実際は…みたいな感じだと良くないのかなって。
アナグラムさんは言っていることとやっていることが一致していて、結果も出ているんですね。
今は組織のとサッカーの話ですけど、会社の人と話す時もサッカーで例えたりするんですか?
まったくサッカーを知らない人には話さなくて相手にもよりますけど、この前もプレイヤーとして優秀な人がマネージャーとして優秀とは限らないよねみたいな議論があって、例としてマラドーナとかナーゲルスマンを出しました。
その二人の名前を出して説明して、どちらがどのぐらい伝わったか、ちょっとわからないんですけど(笑)。
補足
マラドーナ:とにかくすごい人です。野球でいえば長嶋さん…は古いか。大谷とイチローとダルビッシュを足しても追いつかないぐらいの人。
ナーゲルスマン:若くして怪我をして監督業に入った人です。ホッフェンハイム、ライプツィヒで結果を出してドイツNo.1クラブのバイエルンの監督になり、現ドイツ代表監督。
マラドーナがマネージャーとして優秀だったかの判断は難しいですね(笑)。マラドーナですから。そこで相手がペップみたいな例があるよって言ったらどうしたんですか?
補足
ペップ:ジョゼップ・グアルディオラのこと。バルセロナ時代に選手として数々のタイトルを獲得し、監督としてもCLなどのタイトルを獲り続けている人。
選手として優秀な人が、監督して優秀であることに紐づかないことがあるだけであって、ペップだと監督になるにあたってものすごく勉強していると思うので、そこがあれば全く問題ないっていう捉え方をしています。
うまくいかなくてもコントロールできるところに集中する
面白いですね~。すでに考えられているとは。
ただ、結局のところ最後にやるのは選手であり、社員の人ですよね。どうしてもそこに限界を感じるときってないですか?データではこうしたらいいってわかっていても、人が動かなかったりするし、動いたとしてもうまくいかなかったりしますから。
限界はあるとは思うんですけど、コントロールできるところに集中しなきゃいけないなとは思っていて、伝え方やトレーニングの組み方とかに問題があるのであればそこを直すべきですし。
チームの強化という視点に立ったら、その選手を取ってくるのが、果たしてこのチームって最適だったのかとか、どういう補強戦略をとるべきなのかみたいな話に行き着くのかもしれないです。
東大のときは、スポーツ推薦がなくどういう選手を取ってくるかみたいな話すらできない環境でしたので、リクルートから入れるのも面白いなと思ってました。良い印象をもってもらうために進学校のサッカー部にまでアプローチしてたりとかですね。
やっぱり諦めるのではなくて、できることをやっていくしかないっていう気持ちがありますね。
うまくいかなかった理由は必ずどこかにあるから、それを改善し続けるっていう感じですね。
例えば1人の選手が伸びたら、その選手がスタメンクラスになることで、組めるフォーメーションの幅とか広がることってあるじゃないですか。なので、別に単純にプラス1がプラス1として働くわけじゃなくて、プラス5にも10にもなる可能性があるって考えると、地道な努力って無駄じゃないかなっていう気がしています。
仕事でもそうですよね。急に伸びる人がいてやれることが増えたりとか、その人が刺激することによって他の人が伸びるとか。
そうですね、長い視点で見ればいろいろと良い影響が出ると思っています。
最後に教えてください、今後はどのようなことを会社でやっていきたいですか?サッカー分析の経験と広告運用の経験があり、今は人事やっていて、その先のキャリアですね。
まだ人事は半年なのですけど…、今後やっていきたいなと思ってるのは、会社のボトルネックにしっかりアプローチすることです。マネジメントの考え方は、サッカーと通じるところがあって、これらを上段からしっかり理解する部分を会社全体としてできたらいいなと思ってます。
こういう場合にこうするとかだけではなくて、「こういう考え方があるからこうする」といったところをしっかり落とし込めるようにするのが、一つの目標としては、あります。
あとは、現状採用はうまくいっている部分があるので、その理由をしっかり見つけ出して、他にも転用できるような取り組みしていきたいという感じですかね。
うまくいっているから良い、ではなくて、その理由を見つけることで再現性も出るし応用できるようになりますもんね。やっぱり分析癖は抜けないというか(笑)。
今日はありがとうございました!サッカーの話ができて楽しかったです。
私も楽しかったです!
まとめというか
日頃から私が考えているようなことを考えている人が他にいるとは思いませんでした。特にマラドーナ、ナーゲルスマン、ペップのところがドンピシャというか、まさにその例えだよな~と思ったのです。それ以外のプレー原則とかのあたりも。
数年もしないうちに小坂さんから「人事や採用を分析して改善した結果」みたいな記事が出てくるかもしれませんね。
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