アクセス解析は初回の解析で全てが決まる。
アクセス解析をする際に何から始めるか?という疑問にぶつかる人って多いのではないかと思います。出せるデータが多すぎますし、そんなに時間もかけていられませんし、それなりに納得してもらえる提案をしないといけないですからね。私の場合一番最初に始めるのはアクセス解析の3つの視点でも書きましたが、モニタリングレポートを正確に出す、ということです。
これがアクセス解析の基本で、これができていないとそれ以降にやることが全く意味をなしません。
■何故、正確なモニタリングレポートが必要なのか?
例えば気温であれば、35度以上の時は「今日は35度以上の猛暑日なので水分を多く摂りましょう」といった注意喚起ができますよね。取得したデータから基準を超える数値になった時に対応が必要なものとして判断されるわけです。
では、これが急に華氏になってしまったらどうでしょうか?摂氏と同じだとすると華氏では95度以上で注意を出さないといけません。そうすると見ている方も分かりにくいですし、過去のデータも全て華氏に換算しないと比較できないし、このデータをもとにプログラムなどを組んでいるとすべて修正しないといけなくなります。
さらに、来月には華氏ではなくて絶対温度になったらどうでしょうか?絶対温度という言葉自体が知られていませんし、摂氏35度は絶対温度では308.15K(ケルビン)となります。もはやこうなってしまっては何が何だか分からないですし、気温自体を気にする人がいなくなるでしょう。
ですので、Webサイトの効果測定しようと思うと今後ずっと使える明確な基準が必要になるのです。これがすなわちモニタリングレポートです。モニタリングレポートがきちんとできていれば前月、前期、前年などと比較ができますし、多少時間が必要ですがクライアントや社内でも共通の認識でレポートについて議論ができるようになります。
そして、初回が以降の基準になるのでここを正確に出すことに心血そそぐことになります。
※解析以外でもデータを出す仕事全てにおいて共通ですね
■まずは用語と定義を確認
「アクセス数」と言ってもツールによっては訪問数かも知れませんし、ユーザー数と書かれているかもしれません。それ以外にもコンバージョンと目標とかページビューとPVと閲覧とか混同しやすい用語があるので、その用語が何を言っているかを確認します。
定義に関してはかなり細かいところまで知っておいた方がいいので、アクセス解析イニシアチブ アクセス解析の集計と用語定義 第2版をじっくり読んで使用するツールのデータの出し方を把握しておきましょう。
用語と定義が分かっていないとクライアントに聞かれたときに説明することすらできませんし、数字の加工すらできませんので必ず調べておいてください。初めての場合はここにかなりの時間を取られてしまうでしょう。
■サイト上って起こっていることを把握する
PDFファイルのダウンロード、動画の配信数、クリックされた場所、マウスの動き、どこまでスクロールされたか、どこまで見られたか、などなど一つのツールでは把握しきれないほどWebサイト上の行動は測定することができます。自分がモニタリングレポートを出すサイト上で何が起こっているのか?を細かく調べておくことで、どれをレポートとして出すかが判断できますし、後々急に必要になってもあわてることなくデータを出すことができます。
ツールにもよりますが、アクセス解析のデータは遡って取得できないことが多いので、これができていない時も後になってから困ることになります。有料ツールでないと取得できないデータもありますし、ツールも多岐にわたるのでアクセス解析やTwitter分析など、3年間でレビューした100個のツールをまとめた『ウェブ分析ツール大全』を公開! – リアルアクセス解析を参考にしてみてください。
この準備をしていなかった場合、なぜ想定しないなかったか?とか、それぐらい分かると思っていたのにとか、Webサイトだから何でも分かると思っていた、と言われてしまうケースが多いので、そうならないためにもレポートの信頼度=自分の信頼度という心構えを持って準備しておくことが必要です。一度信頼を失ったら自分もデータも気にもされなくなります。
■出した数字を何度も確認する
ツールの出した数字をそのまま鵜呑みにするのは危険ですし、エクセルなどで加工している時は計算式や入力した数値など事細かに検証します。くどいようですが、今後何か月、何年と使っていくものなので過去の数字があてにならないと、それまでの年月や費用が一瞬で無駄になってしまいます。
そうならないためにも必ず何度も何度も確認してください。数字を作っては一晩寝かせ、間違に気付いては一晩寝かせ・・・、を繰り返すしかありません。
■つまらないと思われてもやる
初回のレポートはWebサイト全体の概況を報告するものになりがちですし、そこがスタートなのですが、「ふ~ん」といわれてしまうことも多々あります。また、アクセス解析のレポートは何らかの劇的な変化をもたらす提案を期待されがちです。しかし、それは正確なモニタリングレポートがあって初めてできることなのです。
つまらないと思われるかもしれないし、苦労しているのに簡単に出せていると思われるかも知れません。頑張って出した方としては何か言いたくなりますが、そこはグッとこらえて正確なデータの取得と報告を続けていき、データからわかる問題点と改善提案を続けましょう。
自分が褒めてもらうことが目的ではなくて、クライアントやエンドユーザに喜んでもらうことが目的なのですから。
その1:アクセス解析は数字だけを追ってはいけないけど、数字の根拠は知っておかないといけない
その2:アナログ効果測定のススメ
その3:アクセス解析の3つの視点
その4:アクセス解析は初回の解析で全てが決まる。