その数学が戦略を決めるを読んだ
「伊藤洋一のRound Up World Now!」のITスペシャルで富士通総研経済研究所の湯川さんが紹介されていたの聞いて、面白そうだったので2007年の本ですが読んでみました。「数字」ではなくて「数学」が戦略を決めるってのはユニークですし。
■ワインの値段も打者の貢献度も事前にわかる
ワインは出来上がるまでに長い時間がかかります。しかも飲んでみないとわからないために値段はいわゆる専門家の評価で決まっています。しかし、数式に気象情報を入れるだけでワインの出来がわかるようにしてしまった人がいます。最初は反発していた専門家もその数式の結果が本当の結果に近いことに気づいてから、専門家の予想もそれを勘案したものになったそうです。同じようなことが野球でも起きています(野球に関してはこの本よりも「マネー・ボール」の方が面白いと思います)。
専門家の判断は説得力はありそうですが100%客観的ではありません。時には結論ありきの場合もあるかもしれません。そこに大金が絡めば当然ですし拒絶反応もあるんですよね。
■数字に説得されるのは何となくいや
ここでポイントなのは過去の膨大なデータを目的をもって分析すればある程度未来がわかるということです。コンピューターに未来を決められるのは気持ちがいいものではないですが、実際はそこに至るまでは人間がかかわっているので、機械が答えを出しているわけではないんですよね。基本的にやっていることは天気予報と同じです。過去のデータや現在のデータから気象予報士が予報を出しているわけです。天気予報に違和感を感じないのは、「数字に基づいていても専門家が話しているから」だと思います。数字屋が話してもダメでしょう。人間は人間に説得されたいものなんです。
■大切なのは解釈すること
数字をいじくり回してなんとなくそれっぽい結論をだすとそれが独り歩きしていってしまいます。ということは数字に翻弄されやすくなるということですよね。大切なのはその結論ではなくて、その結論の根拠などをしっかり認識してから判断することです。当然計算を間違うこともありますし、同じデータからでも違う人が分析すれば違う結果になることだってあります。人間のやることですから。
この本を読むと自分たちの知らないところで膨大なデータが処理され、自分の行動が予測されているということがわかりますし、ちょっと怖く感じます。監視カメラで見られているような感覚でしょうか。しかし、うまく使えば生活を豊かにしてくれるものでもあります。それを知った上で数字とお付き合いしていかないといけない世の中になっているんですね。